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2016.03.01

幽霊も人も同じだという沖縄の
優しい映画「メッセージ」

writer : 福田展也

朗読会に参加した200人ほぼすべてが涙したという、ある物語をもとにした映画が、2016年3月12日に沖縄の桜坂劇場で公開される。
映画のポスター
交わることのないはずの二つの人生が、70年もの時を超えて重なり合うという不思議な出来事を描いた「みえちゃんからの伝言」。切なくて哀しいのに、愛おしさに溢れたこの小説を原作に忠実に映像化したのが『メッセージ』だ。

沖縄的な死生観が2時間でわかるハートウォーミングムービー

撮影風景
偶然というより必然の見えない糸を接点に出会うことになったのは、あの世での人生とこの世での人生。
亡くなってしまったものの、成仏できずにいる少女と霊感が強いことを別にすればどこにでもいそうなごくごく普通の主婦。
戦時中シーンの撮影風景
沖縄戦当時の幽霊と今を生きる人間という、住む場所も時代もまったく
違う2人が、ゆっくりと心を通わせていくストーリーはある意味沖縄的だといえる。

実際に沖縄には「グソーや雨垂いぬ下」(あの世は雨垂れの下)という諺があるように、あの世とこの世の距離は本土のそれとはくらべものにならないくらい近い。それだけでなく、あの世の存在を疑わない人がごく普通だし、霊的な体験を日常的にしている人も少なくない。

60年以上も待ち続けた少女が伝えたかったメッセージとは?

娘の描いた家族の絵
映画に登場する小さな幽霊は、ある悲劇的な事件で命を亡くした不遇な
女の子。恋することもなく、子どもを産み育てることの幸せを知ることもなく、時代と国家に翻弄されて不本意に死んでしまったこの少女は、あの世に旅立てずに、ひとり寂しくずっとこの世を漂ってきた。上手に言葉にはできないけれど、ぜひ伝えたいというメッセージを受け取ってくれる誰かが現れるのを待ちながら。

60年以上経って、少女の前にようやく現れたのは同じくらいの年ごろの少女を持つ母親だった。愛していた夫も今では仕事ばかりで実質的に別居状態。相談できる友人も近くにいない馴染みのない場所で、孤独感にさいなまれ自殺を真剣に考えるくらいだった主人公は、鬱屈した感情を無意識に子どもに向け始めた。

自分の娘が描いたおぞましい家族の肖像を見せられて自分の至らなさに向き合うことになったのと、少女の幽霊と出会ったのはほぼ同じ時期だった。

「泣いている子は悪い子だから、殺されることになっている」

子供を抱きしめる女性
「怖くて、つらくて、哀しくて、切なくて、心がいつも泣いている。泣いている子は悪い子だから、殺されることになっている」

ある日、娘の前に現れた小さな幽霊はそういって娘の首を絞めるように
なった。

内地であれば忌み嫌われてしまうだろうこの幽霊に、まるで昔から知っている近所の子どものように接するようになった主人公、淳子。

「アタシがちゃんと子どもたちと向き合って、大事に大事に愛してあげていれば、娘もこんなふうに『哀しい心を持つ幽霊』に付け入られなくてすんだはずだ」

やがて心を開き始めた小さな幽霊は、ずっとずっと伝えたかったメッセージを徐々に語るようになる。その言葉に耳を傾けることで、少女の境遇を知るようになった淳子。

重いテーマなのにあと味爽やか

「この小さな小さな幽霊の大きすぎる心の傷に胸がヒリヒリする想いは、そのまま自分の子どもへの想いにも重なった」

「この平和な時代に生まれた娘が戦死した子と同じ気持ちを抱いていた
なんて」

幽霊の少女、心に傷を負ったわが子、二人の生に向き合う母親。
そこにはもちろん無念さや哀しみや寂しさがスクリーンから流れ出るくらいに溢れている。けれども、映画を観終わった後、心に残っていたのはむしろすがすがしささえ伴ったある種の愛だった。
傷ついた子供を抱きしめる母親
監督は最新作『スクールオブナーシング』の足立内仁章(あだち・さとし)さん。他者とのかかわり、生命というシリアスなモチーフを重すぎず軽すぎず、自然に引き込まれていく映像で綴っている。
主役は『らせん』で貞子を演じ、最新作『日本零年』で準主役を務める佐伯日菜子さん。「異形」の人をおぞましい者としてではなく憎めない存在として描くティム・バートン監督のファンでもある。

感じ方も人ぞれぞれ

映画のワンシーン
重くて哀しいはずの非日常を、ユーモアを交えながら日常の出来事のように綴った映像に、観るものはいつのまにか引き込まれている。青く澄みわたる南の島の空のように希望さえ感じさせてくれる不思議な交流はある意味、実に沖縄的だ。

現世と来世が実は「スープが冷めない」くらい近い距離にあることを気づかせてくれるこの映画からあなたはどんな「メッセージ」受け取るだろう。

スマートポイント

  • 記事を読んで気になった人は予告編とオフィシャルサイトをいますぐチェックしてみてください。
    『メッセージ』トレーラー(予告編)
    『メッセージ』オフィシャルサイト
  • 映画の原作の短編集『グソーからの伝言』(双葉社)を買って「みえちゃんからの伝言」以外を読んでおくと、より一層映画を楽しめるはずです。
  • ネタバレになるから読みたくないという方はあとがきだけでも読んでおくといいかもしれません。

ライターのおすすめ

観る場所も観る時間帯も関係なく、想像の翼でどこにでも連れて行ってくれるのが映画のいいところ。でも、この映画に関しては、ぜひ沖縄で観てほしいです。この映画に涙した後は、昔ながらの佇まいが残る路地裏や墓地をゆっくり歩いたり、沖縄食堂やまやぐわゎー(昔ながらの小さな商店)などに立ち寄ったりして映画の余韻を噛み締めてみてください。沖縄の「おじぃ」や「おばぁ」を遠くから眺めたりでもいいのですが、実際に言葉を交わすことで、映画の延長線上にあるメッセージをひょっとしたら受け取ることができるかもしれませんよ。

福田展也

目下の趣味はサーフィン・沖縄伝統空手・養蜂。心で触れて身体で書けるようになることが10年後の目標。

INFORMATION最新情報は、各施設の公式ウェブサイト等でご確認ください。

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